スメルチ

『異端の人間学五木寛之 佐藤優

 佐藤 この映画にもそういうシーンがたくさん出てきます。読者のために解説しておくと、ロシア語で「死」のことを「スメルチ」といいます。スメルシュというのは、「スメルチ・シュピオナム(スパイに死を)」の頭の文字を合わせた言葉です。スメルシュは、組織的にはKGB(国家保安委員会)の前身であるNKVD(内務人民委員部)に所属していますが、裁判なしに脱走兵やドイツ軍に寝返った兵士を処刑する権利を持っていますね。

 五木 ソ連兵にとって怖いのは二つあって、敵兵が一つと、それからもう一つはスメルシュ。彼らに比べれば、日本の憲兵とかソ連の秘密警察も大したことはない。スメルシュはその場で射殺する。街頭で殺しっぱなしで死体も片付けない。(p25)