宗教戦争

『戦後が戦後でなくなるとき』大澤正道

 西欧最後の宗教戦争三十年戦争(一六一八~四八年)である。プロテスタントカトリックの抗争で始まったこの戦争は、それぞれの教派を支援する諸外国(墺・西・仏・瑞)が入り乱れての大戦に発展し、宗教戦争というより各王家の権力闘争と化した。戦場になったドイツは二百年昔に逆戻りした、といわれるほどの壊滅的な打撃を受けてしまった。それ以後、宗教戦争は影を潜め、世俗戦争が主流になる。(p80)


 それに対して宗教戦争の戦争目的は抽象的かつ無限定に走りやすい。実利よりも信仰が優先されるから、妥協はむずかしいし、戦争規則も決められない。なにしろ土俵(価値観)が違うのである。宗教戦争が植民地戦争や古代の帝国戦争同様、しばしば非人道的な戦争、絶滅戦争になるのはそのためといっていい。(p80)


 トインビーも指摘しているように、宗教戦争のあとを受けた十八世紀の世俗戦争は、歴史上のどの時代よりも穏やかなものになっていた。しかし十九世紀に入り、国民戦争が始まるとともに、戦争の本性はふたたび牙をむき始める。その背景についてはすでに縷々述べてきた通りだ。(p81)