安倍政権にあるのは愛国心でなく恐怖心

『9条は戦争条項になった』小林よしのり

 政府のいう「日本の存立危機事態」は、当面この先ないだろう。中国・北朝鮮が日本を攻撃する事態が、実際にはありえないことは明らかである。
 にもかかわらず、安倍政権は憲法も無視して準備を急がねばならないほどの「存立危機」が迫っているとして、安保法制を成立させた。
 「安保法制を成立させるためなら、立憲主義法治主義も踏みにじってかまわない! そうしなければ我が国に滅亡の危機が迫ったときに、対処できないんだ!」と、法制化を推進したのだ。
 国会における安保法制の議論では、「安保環境の変化」を強調していたが、これは要するに「中国が怖いから対米追随を強めるんだ」ということである。
 安倍政権は中国への怯えから、立憲主義が崩壊するほど切迫した事態があるのだと言っていたにすぎない。
 安倍首相は、単なる臆病者なのだ。
 なにしろ安倍氏は、関西のテレビ番組『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ、2014年4月20日)に出演したとき、「あなたは国のために死ねますか」という問いに対して、〇(マル)かと思いきや、△(三角)をあげた人である。
 安倍は「いや、そういうことは軽々しく言えないです」と言い、そこで共演者の津川雅彦が親切に「総理になったときに、死ぬ覚悟はできてるでしょ?」と確認してあげた。それでも安倍は「死ぬ覚悟ができてるなんて言っても、嘘っぽく聞こえてしまうだろうなと思うので」と屁理屈で逃げたのだ。
 ×(バツ)をあげたらそりゃあ政治家として失格だろう。だが、〇(マル)をあげるのが恐いので、△(三角)をあげたのだ。これにはあきれる。首相は自衛隊の最高指揮官であるにもかかわらずだぞ!(p45)