放射能兵器・劣化ウラン弾汚染

『いのちを考える40話』天笠啓祐

 湾岸戦争から使い始める
 一九九〇年夏、イラク軍がクウェートに侵攻しました。石油の利権を確保するのが目的でした。翌一九九一年一月一七日、米軍を主力とした多国籍軍イラクを攻撃して、湾岸戦争が始まりました。この戦争では、さまざまな新兵器が用いられました。その一つに、核兵器の代わりに、日常的に使える放射能兵器が登場しました。それが劣化ウラン弾です。無差別に生命を殺傷するのが目的で、放射能汚染を引き起こす兵器が用いられる時代が始まりました。
 その後、九四年にはボスニア・ヘルツェゴビナ戦争の際に、NATO軍が空襲で用いました。九九年にはコソボ紛争でもNATO軍が空襲で使用しました。二〇〇一年九月一一日の連続テロ事件をきっかけに始まった、アフガニスタンイラクの戦争でも大量に用いられ、いまや戦争の際には、日常的に用いられるようになりました。イラク戦争では、英国国防省が使用を認め、米国中央軍も三一万一〇〇〇発の使用を認めました。
 原水爆といった核兵器は、一発で強い破壊力を持ち、大量の死の灰をもたらすのに対して、劣化ウラン弾は、貫通力を高めるためにつくられたもので、大量に用いらることで、広範な地域を汚染することになります。核兵器のように一度で大きな被害が出ないため目立たないものの、放射能の影響だけを見れば、結果的には核兵器を上回る被害をもたらすことになります。
 かつて湾岸戦争劣化ウラン弾が大量に使われた際に、イラク全域でがんや白血病、先天性障害の赤ちゃんが増えつづけました。被害はイラクの人たちだけではありませんでした。多国籍軍に参加した、多くの帰還兵や退役軍人の間で原因不明の病気が広がり、「湾岸戦争症候群」といわれました。その最大の原因が、劣化ウラン弾だと思われます。(p110)


 劣化ウラン弾とは
 劣化ウランとは、核燃料サイクルの中でできる、使い道のないウランのことです。核燃料サイクルは、ウラン鉱山での採掘から始まります。採掘されたウラン鉱石は製錬された後、濃縮しやすくするため転換工場で六フッ化ウランに転換されます。現在世界で稼働している原発の大半が濃縮ウランを用いています。(p112)


 想像を絶した被害が拡大しています。ベトナム戦争で用いられた枯れ葉剤以来の、実際に使われたジェノサイド(皆殺し)兵器だといえます。(p115)