合成洗剤の基本毒性

『すこやかに生きる暮らしの科学』坂下栄

 私がこれまで実験したところでは、それはまず皮膚障害に始まります。合成洗剤の人体有害性に気づいたのも、ヒトの皮膚障害からでした。ネズミの背中に洗剤を塗布して、その後の皮膚の変化を観察すると、石けん類はなんら皮膚変化をもたらさないのに、合成洗剤は1日目から皮膚障害を発症させます。シワをつくったり、浮腫(水ぶくれ)をおこしたり、ひび割れて出血したりするのです。
 障害の程度は、塗布した洗剤の濃度や量、塗布時間で異なりますが、合成洗剤の種類によっては、3日目頃から死んでいくネズミさえ出てきたのです。ヒトでもアレルギーに罹りやすい人とそうでない人があるように、実験用ネズミも個体差があります。しかし、生き残るものも、大なり小なり皮膚障害をおこすのです。(p34)


 これは皮膚表面にある皮脂膜の脂をはぎとり、表皮細胞の細胞膜の脂を溶かすようにしてとりさり、さらには表皮細胞間にある脂もとってしまうことによっておきるのです。この作用こそが、生物にとって重要なからだをまもる表面張力の消失をもたらすのです。
 そして、いったん表面張力が失われてしまうと、洗剤は微量ながら、しかし速やかに皮下に浸透していき、内臓にまで到達するということも推定されました。これは、ネズミの内臓を電子顕微鏡で観察して証明されました。ネズミの皮膚に炎症をおこすだけでなく、肝臓や腎臓にも障害をひきおこし、電子顕微鏡の観察によって細胞膜をとおして細胞内にまで浸透し、細胞膜をやぶっていることがわかりました。皮膚から浸透して肝臓、腎臓の細胞も変性させるのです。(p35)