塩素殺菌

『山で暮らす愉しみと基本の技術』大内正伸

 『生でおいしい水道水』中本信忠著(築地書館)によれば、戦前まで日本には、化学的処理のない、砂のプールと自然発生の微生物だけでできる「緩速ろ過方式」の浄水場が全国に1万ヶ所以上あり、それと井戸水で、飲料水から生活の水ほとんどすべてがまかなわれていたという。現在主流の「急速ろ過処理」は戦後、進駐軍監視下で強制されたもので、このやり方だと、濁りを固める化学物質と、それを速く沈澱させる機械が必要になってくる。私(大内)は以前、設計コンサルタント浄水場の設計に関わったことがあるが、機械売り込みの企業の凄まじい攻勢とその値段に驚いたものだ。なるほど「急速ろ過」は企業にオイシイ方式なので、「緩速ろ過」(機械も薬品もいらない)にはもう戻れないのは想像がつくのである。「緩速ろ過方式」は水中の藻、砂の中の微生物などが浄水に関与している。生き物が活躍しているから、細菌やウイルスが除かれる。これに対して「急速ろ過処理」は微生物や細菌を除去する能力がないので塩素殺菌する。現行の水道法では消毒・滅菌剤としての塩素の残留が「1ℓ中に0.1㎎以上」になるよう義務
づけられており(だから緩速ろ過方式でも塩素は入る)、残留塩素の上限は決められていない。取水源が汚れていれば大量の塩素が投入されるのがつねなのだ。(p92)