資本への対抗運動

『世界史の構造』柄谷行人 岩波現代文庫

 マルクス主義者は、マルクスプルードンを批判したため、流通過程での対抗運動を軽視してきた。しかし、労働者階級が自由な主体として資本に対抗して活動できる場はやはり流通過程にある。それによって、資本が利潤追求のために犯すさまざまな行き過ぎを普遍的な観点から批判し是正することができる。のみならず、それによって、非資本制的な経済を自ら創り出すことができる。具体的にいえば、消費者=生産者協同組合や地域通貨・信用システムなどの形成である。
 マルクスがその限界を指摘したため、協同組合や地域通貨、つまり、資本制社会の内部においてそれを脱却しようとする運動は、否定されないまでも、軽視されてきた。しかし、たとえそれによって資本主義を超克できないとしても、資本主義とは異なる経済圏の創出は重要である。それは、資本主義を越えることがどういうものかを、あらかじめ人々に実感させる。
 生産過程における資本への対抗がストライキであるとしたら、流通過程における資本への対抗手段はボイコットだ、と述べた。たとえば、ボイコットには二通りある。第一に、商品を買わないことであり、第二に、労働力商品を売らないことである。だが、そのためには、そうしないですむ条件を創らなければならない。つまり、非資本主義的な経済圏が存在しなければならない。
 資本は自己増殖することができないとき、資本であることを止める。したがって、早晩、利潤率が一般的に低下する時点で、資本主義は終わる。だが、それは一時的に、全社会的な危機をもたらさずにいない。そのとき、非資本制経済が広範に存在することが、その衝撃を吸収し、脱資本主義化を助けるものとなるだろう。(p467)