生物特許と「経済的植民地化」

モンサント』マリー=モニク・ロバン

 「生物特許は、植民地の歴史と切り離せません」とヴァンダナ・シヴァは言った。「英語やスペイン語、ドイツ語で特許を意味する『パテント』という言葉は、そもそも大航海時代の『特許状(lettre patente)』という言葉に由来しています。これは、当時のヨーロッパでは王の印璽の入った公文書を指していました。ちなみに、ラテン語で『パテンス(patens)』は『開かれた』『明らかな』という意味です。国王は冒険家や海賊たちに特権を与え、国王の名において異国の土地を征服させたのです。ようするに『パテント』という言葉は、かつてヨーロッパの国王が世界中を植民地にしようとした時代に、領土を征服することを意味していました。一方、現在の特許がめざしているのは、生物を横領することによって経済的に征服することです。それを行なっている新たな王が、モンサントなどの多国籍企業です。この大航海時代の領土征服も現在の経済征服も、同じ原理にもとづいています。つまり、かつての特許状も現在の生物特許も、白人がやってくる以前に存在していた生命を無視するという考えにもとづいているのです。ヨーロッパ人たちはアメリカ大陸を植民地にして、そこを『新世界』と呼びました。そして『新世界』の土地は『テラ・ヌリウス(空白の土地)』と宣言されたのです。それは『白人にとっての空白』という意味です。これと同じように、現在は生物に関する特許と知的所有権という海賊行為が『空白の生物』という申し立てのもとに行なわれています。つまり、生物は実験室で遺伝子解析が行なわれないかぎり価値はない、というわけです。そこでは、数千年にわたって生物多様性を守りながら生きてきた無数の人々の労働や知識、技術が無視されているのです」(p472)


 「南側の国の人々にとって、生物特許はどのような結果をもたらすのでしょうか?」と、私は彼女が科学哲学の博士であることを思い起こし、その明瞭な考え方に感銘を受けながら尋ねた。
 「悲惨な結果ですよ!」と彼女は答えた。「なぜなら生物特許は、一六世紀のイギリスにおける『囲い込み』と同じ働きをしているからです。産業革命の初期に起こった『囲い込み』運動は、それまで人々が共同で利用していた公共空間を囲い込み、私有化しました。それ以前は、もっとも貧しい村人でさえ、その公共空間を使うことができ、そこで動物たちにエサを食べさせることもできたのです。生物特許も、それと同じことをしています。つまり、人々が食糧や薬として利用している植物や動物を囲い込んでいるのです。それは、もっとも貧しい人々から生活するための手段、そして生き延びるための手段を奪うことにつながります。それは種子や薬のことを考えればすぐにわかることです。その特許が認められると、人々はロイヤリティーを支払うために高額の負担を強いられることになります。インドの特許法では、そのような理由から、万人が手に入れられるようにするために、食物、農業用品、薬などは特許の取得対象から除外されています。しかし、世界貿易機関(WTO)や、その前身である『関税および貿易に関する一般協定(GATT)』の最終ラウンドが礼賛してきた欧米の特許システムが拡大すると、貧しい人々の経済的権利が根底から奪われることになってしまうのです」(p473)