「遺伝子警察」モンサント

モンサント』マリー=モニク・ロバン

 「GMOは、アメリカの特許法に守られています」と、アメリカ大豆協会(ASA)の副会長ジョン・ホフマンは、言葉の切れ目にも笑みを絶やさず、私に説明した。「ですから、私には来年の種蒔きのために種子を保存する権利がないのです。それはモンサントなどのバイオテクノロジー企業を保護するためです。というのも、私たちが幸運にも利用することができるようになったこの新しい技術を開発するために、彼らは何百万ドルものお金をつぎ込んだのですから」。このアイオワ農民の話を聞きながら、私はモンサント社CEOのヒュー・グラントを思い浮かべた。というのも、このインタビューでダニエル・チャールズの話した内容は、まさにヒュー・グラントが述べた次の言葉と同じだったからだ。「私たちの関心は知的所有権を守ることであり、そのことを私たちが弁解する必要はまったくありません。まったく耐え難いのは、モンサントの所有物である遺伝子を、農家が二度目の収穫で再生産することです。それは法律に背く行為なのです」
 「ところでモンサントは、ある農民が収穫した種子を畑に蒔いていることを、どうやって知るのでしょうか?」と、私はジョン・ホフマンに尋ねた。
 「ふーむ」と、彼は少し困った表情を浮かべた。「その質問には答えることができません。モンサントに質問してみるのがよいと思います……」(p319)


 食品安全センターの報告書は、「モンサントアメリカ農民」と題された八四ページに及ぶ労作である。そこで、北米に「遺伝子警察」と呼ばれる組織が存在していることの証拠が挙げられた。実際には、それはアメリカのピンカートン探偵社やカナダのロビンソン社が行なっている活動である。また、この報告書によれば、一九九八年以来、モンサントアメリカの大平原で「魔女狩り」と呼ぶべき行為を行なっていることが暴露された。つまり、モンサントは農民に対する「数千件の調査と数百件の訴訟」を行ない、その結果として「膨大な人数の農民が破産」したことが示されたのだ。(p320)


 「モンサントの攻撃はしばしば不正な言いがかりにすぎないのですが、攻撃を受けた農民のほとんどは示談交渉を選びます。モンサントと裁判をすれば多額の費用がかかることを、農民たちは恐れているのです。しかし、示談で決着した事例については、その内容はほとんど明らかになっていません。こうした決着には守秘義務条項がともなうからです。私たちが調べることができたのは、単に裁判で判決が下された案件だけにかぎられているのです」(p322)


 食品安全センターの報告書では、モンサントが年間一〇〇〇万ドルの予算と七四人のスタッフを使って「調査」していることがわかる。第一の情報源は、フリーダイヤル「1-800ラウンドアップ」である。一九九八年九月二九日、このフリーダイヤルは正式に運用が開始され、出版物を通じて告知された。……ダニエル・チャールズによると、「スパイ回線」は一九九九年に一五〇〇件の電話を受け取り、そのうち五〇〇件が「調査」の引き金となった。『ワシントン・ポスト』は慎重な言葉遣いで「地域共同体を支える社会的な絆を解体しようとしている」と批判した。(p322)


 「特許のせいで、農村共同体の生活はむちゃくちゃになりました」と、ラニヨンは明らかに興奮した様子で私に話した。「特許のせいで、隣人同士を結んでいた信頼が失われました。私自身について言えば、現在の私が話をすることができる農家は、たった二軒だけです。ついでに、あなたのことも言いましょう。私は、あなたと電話で話すことと会うことを了承する前に、グーグルの検索サイトで、あなたが何者なのかを調べたのです……」
 「農家の人たちは、ほんとうに怖がっているのですね?」
 「怖がっているのは事実です」と、トロイ・ラウシュが私に答える。「モンサントから身を守るのは不可能なんです。ご承知のように、アメリカ中西部では、農業で得られる利益は減る一方です。この状況の中で生き残るための唯一の方法は、農地の面積を増やすことです。そのために一番よい方法は、隣人がいなくなることです。そういう状況で、モンサントのスパイ回線に電話を一本かければ何が起こるのか、すぐに想像がつくことです……」(p329)