牛成長ホルモン問題

モンサント』マリー=モニク・ロバン

 「見てください」と、ジョン・キンズマンが言った。「モンサントが配布したポジラックの広告チラシを取っておいたのです」と、この農民の指導者はそれを読み上げた。「ポジラックを投与された牛は、とても健康です。〔……〕投与された牛から生まれた子牛たちもたいへん健康です」。「まったく嘘っぱちですよ!」とテリーが抗議した。「私は一二頭の牛に成長ホルモンを使いましたが、すぐに牛たちの体重が驚くほど減っていることがわかりました。それからずっと飼料を増やしましたが、それでも状態は悪化するばかりで、牛たちはどんどん痩せていきました。授乳期が終わって、私は牛たちに種付けしようとしました。四、五回くりかえしましたが、ダメでした。私が注射を打った牛たちは、どれも子牛を生まなかったのです。最終的に、私は牛たちを処理場へ送りました。他の牛たちには薬を節約していたのが、不幸中の幸いでした。そうしていなければ、すべての牛を失っていたでしょう……」(p182)


 この悲惨な報告書を読みながら、私はFDAの獣医師リチャード・バロウズ博士の衝撃的な考察を思い出していた。「牛たちに注射されているものは恐ろしい薬です。牛たちは牛乳工場に変身し、蓄えていた栄養は永久に吸い上げられます。このため、牛の骨は弱くなります。乳房は奇形化し、牛たちは足を引きずるようになり、かろうじて立っているだけです……」(p183)


 「rBGHは、まさしく麻薬です」と、キンズマンは答える。「注射を止めると、牛は禁断症状に陥って、ほんとうに倒れてしまうのです。ですから、ポジラックは『牛クラック』[クラックは、覚醒剤の隠語]と呼ばれています。仮に、大手の飼育業者の牛乳を求める消費者がなくなり、そのために業者が牛への注射を止めるとしたら、どうなるでしょう。その時、業者は牛たちを処理場に送らなければならなくなるでしょう。その数は、私たちの見積もりによれば、この国の乳牛の三分の一に達します……」
 「なんて恐ろしい」と私は呟いた。「しかし、このような異常事態がどうして起こったのでしょうか?」「マネーの魔力は目をくらませるのです」、ジョン・キンズマンは答えた。「モンサントは、反対者の声を黙らせる術をよく心得ています」(p184)