セラリーニ事件

『なぜ遺伝子組み換え作物に反対なのか』ジャック・テスタール

 二〇一二年九月にカーン大学〔フランス北西部のカーン市にある大学〕の科学者たちは、遺伝子組み換えトウモロコシ(モンサント社のNK603系統)とラウンドアップ(モンサント社が開発した除草剤。このトウモロコシは、遺伝子を組み換えたためにラウンドアップに対して耐性をもつ)を餌にして飼育したラットを二年間にわたって観察した結果を発表した。実験ラットに対しては、定期的に採血や採尿が実施され、また各種臓器の分析が行なわれた。統制群〔GM作物を餌にして飼育されていないセット〕と比較すると、科学者たちは、メスのラットには早期の腫瘍、オスのラットには腎臓および肝臓の障害を確認した。これは完璧な実験であるとはいえないが、実験の予算がきわめて限られていたことを考慮しなければならない(二〇〇匹の実験動物を使って数多くの分析を行なうには、三〇〇万ユーロの予算では足りない)。この研究によって、完全無比な証明ができたわけではない。カーン大学の科学者たちも、今回の実験をより良い条件で再現したいと望んでいる。(p46)


 この発表があった二〇一二年九月一九日以降、メディアでの扱いにも変化が生じた。ロイター通信は、憤慨した科学者たちに発言の場を提供した。その後、彼らの発言は繰り返し報道された。それまでロイター通信は、バイオテクノロジー産業界の出資によるロンドンのサイエンス・メディア・センターが集約する情報を配信していた。したがって、バイオテクノロジー産業界は、多国籍企業の共通の利益が話題になると、すぐに辛辣な批判を浴びせかけて相手を黙らせることができたのである。
 ヨーロッパ系企業のロビー活動を監視する非政府組織コーポレート・ヨーロッパ・オブザーバトリー(CEO)によると、メディアはいつもすぐに誘導されてきたという。そのなかでもモンサント社は、強力なロビー活動を行ないながら公での議論を巧みに避けてきた。モンサント社は、御用学者とお抱えのメディアを使って、科学者同士を論争させ、自分たちは大衆の批判から逃れるかたわら、大手スーパーが研究結果の信憑性について疑念を生じさせるための研究に資金提供していると示唆するようなまねまでしたのである。(p51)