下刈り

『図解 これならできる山づくり』鋸谷茂 大内正伸

 梅雨時期を逃がさない
 植栽木の周囲の雑草などを刈って空間を開け、光を十分に入れて植栽木の生長を促すのが下(草)刈りである。
 よく勘違いされるのは、植栽木と競合する、邪魔する草木を除くのが下刈りだと思われていることだが、そうではない。植栽木が育つのに必要な太陽の光を十分に受けられるようにすることが下刈りの第一の目的である。
 同じじゃないか、という人は、この下刈りをいつやるのか? ということで考えてほしい。つまり、ただ草木を除くだけなら、草木が伸びきった七月末から八月にかけて刈るのがよいのだが(事実、林業の教科書などにもそう書かれてあるが)、下刈りは植栽木が光を受けるために必要なのだと考えると、もっと前の時期に行なうのがよくなる。なぜなら、樹木がもっとも生長するのは雨が降って夏至がある(日がもっとも長い)梅雨時期だからである。この時期が植栽木の生長を促すのにもっとも効果的な下刈りの適期なのである。
 下刈りは梅雨入りと同時に作業を始めて、梅雨の明ける頃に終える。曇った日の作業は体力もあまり消耗せず、作業効率も上がる。下刈りを始める順番は、雑草の害をもっとも受けやすい幼齢林から、順に林齢の高い林地へと作業を進めていくとよい。
 下刈りは、植栽木の樹高が雑草より高くなり、生長に必要な日光を十分に受けられるようになるまで、植え付けてから八年ぐらい行なう。
 くり返すが、下刈りを畑の草取りと同じように考えて、雑草を放っておくと養分を奪われ、植栽木が生長できないから行なうという人がいるが、山と畑とでは雑草の効用は大きく違う。山では雑草木は養分循環の一環を担っており、また土中に蓄積した養分を流出させない働きもある。植栽木の生長の邪魔にならないかぎりは残して、その効果を維持したほうがよい。(p124)


 下刈りの刈り高は地際から一〇㎝といわれる。しかし、植栽木が必要な空間と日光は、刈り高が三〇㎝でも十分確保される。また、三〇㎝ぐらい残したほうが獣害も少なくなる。一〇㎝程度だと、下刈り後の山はシカやカモシカにとって植栽木だけ残る恰好のグラウンドだが、三〇㎝となると刈り痕が腹をこすって歩きにくく、しかも植栽木以外の雑草や広葉樹も一定量残せるので、集中的な食害が避けられるのである。被害は林縁やけもの道沿いに限られ、角こすりも減ってくる。
 さらに三〇㎝ぐらい刈り高があると、前生樹の切株よりも高く刈れるので、刈り払い機のキックバック事故が大きく減らせる。また小石のはね上げも少ない。安全のメリットも非常に大きいのである。(p127)