スギの伏条更新

『図解 これならできる山づくり』鋸谷茂 大内正伸

 針葉樹の人工林が、雑木林のように萌芽更新(切り株から出た芽を育てる)できたらどんなに楽なことだろうか。じつは、降雪地ではこれに近いことが可能なのである。日本海側の芦生スギの系統(太平洋側に自生するものをオモテスギと呼ぶのに対してウラスギとも呼ぶ)は、地面に近い下枝を残しておくと、枝が垂れ下がり地面に接したところから発根して、新しい株が育っていく。ウラスギは雪への負担が少ない葉の形状で知られるが、本来そういう伏条する性質を持っているのである。この場合、親株を伐っても子株は生長し続ける。
 もし、このスギの伏条更新が施業として完成すれば、林業は「地拵え」や「植林」からも開放されることになる。また治山のためにもたいへん優れた植生循環となるだろう。実際、このような天然更新の林業を続けていた林地が福井県の和泉村にあったそうだ。
 鋸谷さんが自分の山にその天然スギの苗を植えて観察を始めたのが二五年前。今では三代続けて下枝が根付いたスギの姿を見ることができる。鋸谷さんは施業実験のために細かい面積の林分を多数所有されているが、このような施業研究にも取り組まれていることを付け加えておきたい。(p124)