新たな森づくりに気付く

『図解 これならできる山づくり』鋸谷茂 大内正伸

 間伐遅れの山は、ひょろひょろと林立するその風貌から「線香林」などとも呼ばれる。木が間引かれないために互いの枝葉がぶつかって、光合成の量が少なくなるうえに、地中の養分を奪い合うために木が太れないのだ。しかも上部が枝葉で密閉するため林内は暗く、下草が貧弱になり、他の植物がまったく見られない山もでてくる。(p14)


 その間伐遅れのヒノキ林の一部を、金澤さんは森林組合に頼んで間伐したことがある。ところが林内の環境はほとんど改善されなかった。伐る本数の少ない従来の間伐では、植生荒廃の進んだヒノキ林の場合、すぐに元の暗い林に戻ってしまうからだ。
 そこで、自分でも林業の勉強を始めた。NPO(特定非営利活動法人)の主催する「間伐・枝打ち体験会」にも参加してみた。……
 そんなとき筆者(大内)のサイトで、この本で紹介する鋸谷式の間伐法に出合った。
 それは一言でいうなら、「木の畑」のようになった人工林を「環境保全型の長伐期の森」に変えていく新しい森づくりの手法である。具体的にはスギ・ヒノキの人工林をおもいきって①疎らに間伐し、②空いた空間に広葉樹を呼び込んで、③針葉樹と広葉樹の複層・混交林にする、というものだ。作業もいたって省力。伐った木の搬出を前提とせず(「伐り置き間伐」)、玉切りもしない。伐り倒したらそのままなのだ。
 大きく空間を開けることによって一〇年は放置できる。その間に下草が生え、広葉樹が侵入してくる。とくに初期に侵入する広葉樹は生長が早く、治山効果を高める。こうした植生環境をつくれば、残したスギ・ヒノキは大径木に育ち、私たちの生活環境を守る森へと変化していくというわけである。(p17)


 施業としては実に単純明解な方法だった。「大きく間伐すると残した木も雪折れしやすいから……」という理由で、強度の間伐を避けるプロも多いが、これには「形状比」という概念や、立ち木のまま枯らして間伐効果を出す「巻枯らし間伐」という画期的な方策も鋸谷式には用意されていた。
 これなら森林ボランティアにも作業ができる。いまある人工林を活かしながら、広葉樹と共存する森づくりには納得がいった。従来の間伐と異なるこの新しい方法で、金澤さんは森づくりに取り組んでみることにした。(p18)