木を伐って森を守る

『田舎のちから』高橋信正 金澤洋一 編著

 植えた苗木をそのままにしておけば、自然に大きくなり、立派な人工林になるのでしょうか。中学や高校の生物の時間に植物遷移ということがらを習ったと思いますが、ある場所の植物の集団は時間とともに移りかわり、最終的には極相(その環境条件にあった安定的な状態)という林の状態にいたります。植えつけた苗木も当然この自然法則のもとにあって、手をこまねいていれば、ほかの植物との競争に負けてしまい、ちがう植物にとって代わられてしまうのです。植えた木でも自然の遷移にしたがうのです。人工林には、植えた樹種だけの林をつくるとした当初の目的があったはずです。だとしたら、遷移が進み、ほかの植物集団に代わってしまうことは決して望ましいことではないでしょう。
 人工林も作物同様に人の管理が必要なのです。木を植えるときにはどんな林にするか、目的があります。植える人は、最終的に目的とする林、たとえば、木の種類をそろえ、ある太さをもった木をどの程度の本数を育てるか、といったことを考えて木を植えます。木を植えたら、当初の目的にそって、適切に手をくわえて、植物の遷移をコントロールし、また植えた木同士も競争をしますから、その間の競争もコントロールする必要があります。放っておいては決して目的とする林にはなりません。(p68)