黒蜥蜴

三島由紀夫『黒蜥蜴』
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いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました……あなたの心です!

 アニメをこよなく愛する皆様には、馴染み深いこのセリフ。ルパン三世カリオストロの城」において、銭形警部が発する名台詞ですよね。でも、この台詞が三島由紀夫の戯曲『黒蜥蜴』の一節を元ネタとしたものであることをご存知の方は少ないのではないでしょうか。
 三島由紀夫といえば高尚な純文学作品ばかりを世に送り出した人というイメージがありますが、実は、上質の大衆文芸も数多く遺しているのです。たとえばこの『黒蜥蜴』。この作品は江戸川乱歩の同名の小説を三島が戯曲(※劇の台本です)に編み直したものです。名探偵、明智小五郎と女盗賊、黒蜥蜴。探偵と盗賊という相容れぬ二人が、追いつ追われつしていく内に激しい恋心を相手に対して抱き始めてしまうという筋。
 ヒロインである黒蜥蜴は美しいものをひたすら求める盗賊で、特に宝石に目がなく、美しい人間を見つければ、迷うことなく誘拐し、剥製にしてしまうという猟奇的な趣味の持ち主。しかし、その一方で彼女には子どものような天真爛漫な一面もあり、憎めない。また、探偵の明智小五郎もどこかクールでカッコいい。
 少しグロテスクな描写もありますが、美しいものが多く出てくるこの作品はどこかロマンチック!「カリオストロの城」が好きな方ならきっと面白く感じるはず! 会話で構成される戯曲なので、小説を読みなれていない方も楽しめるでしょう!