維新の若者

『決定版 三島由紀夫全集35』

 維新の若者

 桜田門外の変は、徳川幕府の権威失墜の一大転機であつた。十八烈士のうち、ただ一人の薩摩藩士としてこれに加はり、自ら井伊大老の首級をあげ、重傷を負うて自刃した有村次左衛門は、そのとき二十三歳だつた。
 明治政府になつてからも、閣議に列するものは、三十代、四十代で、清新の気があふれてゐた。
 今のやうに、どこを見渡しても息のつまるやうな老人社会ではなかつた。老人社会の特徴は、何をやるにも臆病で、石橋を叩いて渡らず、しかも口先だけは空威張りをすることである。……
 しかし私は、今年こそ、立派な、さはやかな、日本人らしい「維新の若者」が陸続と姿を現はす年になるだらうと信じてゐる。日本はこのままではいけないことは明らかで、戦後二十三年の垢がたまりにたまつて、経済的繁栄のかげに精神的ゴミためが累積してしまつた。われわれ壮年も若者に伍して、何ものをも怖れず、歩一歩、新らしい日本の建設へ踏み出すべき年が来たのである。(p372)