治安維持法

『決定版 三島由紀夫全集40』

 デカダンス意識と生死観  埴谷豊高 村松剛

 三島 ところが、当時の日本のある時代の雰囲気のなかで、共産党が昭和十一年までに弾圧されましたね、完全に。そのときにもう日本では革命の可能性がないのだと、ずっと先を考えなければならない。自分たちが生きている間にあるかないかわからない。そのときに、どうして生きる形を考える情熱がわいたのでしょうか。つまり革命のために死ぬことはできなくなった。治安維持法で死んだのは一人もいない。小林多喜二は、必ずしも治安維持法によって死んだとはいえない。治安維持法で死んだ人は、一人もいない。銃殺もしてくれなければ、首も切ってくれない、さあ困った。そのときの、さあ困ったというのは、生きる探究になったときの、それはまあ転向の問題かもしれませんね。(p201)