『決定版 三島由紀夫全集40』

 尚武の心と憤怒の抒情――文化・ネーション・革命  村上一郎

 三島 お能というのはほんとうのネクロフィラスな芸術だと思う。死体愛好症ですよね。言語表現がもう突き抜けちゃったところに死体がいっぱいころがっている。幽霊がいます。お墓があります。その中では腐って骨があります。そういうものに優雅が直面しちゃった。だからあとの時代にできた。そうしてその言葉自体は非常に優雅な言葉で、王朝時代の栄華を夢みたり憧れたり思い出したりしているのですけれども、内容は死ですよ、死以外になにもない。それも死というより死体愛好症ですね。(p619)