共産社会の階級

『文化防衛論』三島由紀夫

 学生とのティーチ・イン

 三島 共産社会に階級がないというのは全くの迷信であって、これは巨大なビューロクラシーの社会であります。そしてこの階級制の蟻のごとき社会にならないために我々の社会が戦わなければならんというふうに私は考えるものですが、日本の例をとってみますと、日本にどういうふうに階級があるのか、まずそれを伺いたい。たとえばアメリカなどは民主主義社会とはいいながら、ヨーロッパよりさらに古い、さらに深い階級意識がある国です。というのは、ヨーロッパを真似して成金が階級をつくったのですね。ですからこれはアングロ・サクソン文化の伝統ですが、クラブというのがありますね。みんなメンバーシップオンリーのクラブで、下のクラブの人が上のクラブをステイタス・シンボルとして、ステイタス・クライマーが上流のクラブへ入るためにあらゆる算段をするわけです。自分もえらくなり、金もでき、やっとそこへ入れる。そうすると自分の息子に来るお嫁さんが違ってくるのです。そして自分の交際範囲がすっかり違ってき、階級が一つ上がった。アメリカにはステイタス・シンボルというものが非常にたくさんあります。ところが日本ではステイタス・シンボルに当るものが私は何があるかと聞きたい。(p274)