核兵器の進歩

『文化防衛論』三島由紀夫

 学生とのティーチ・イン

 三島 たとえばいまに核兵器が進歩しますと、核ピストル持った強盗が銀行へ入るかもしれない。こんな時代は私はすぐ目の前へきていると思うのですね。プルトニュームの密輸があっち、こっちでできるようになると、ピストルに核兵器詰めて、今度ガードマンを核で殺すなんていうことが起るかもしれません。そういう核ならばどうかと申しますと、そういう核は戦略核を持っているからこそ戦術核というものはできるので、大刀小刀の関係みたいなもので、武士が二本刀さしていたのは小刀だけじゃしようがない。しかし大刀だけならまだ役に立つが、小刀は大刀あっての小刀です。それで宮本武蔵のような二刀流ができるのですが、小刀だけじゃ非常に心細い。同じように、戦術核というものは安上がりだが、戦略核あっての戦術核だ。なぜなら拳固を出してそれが戦術核の兵器であったならば、向うがすぐ戦略核を出してきた場合、たちまちこっちはやられちゃうのです。しかも戦術核は戦略核を誘発する危険をいつも持っているわけですね。(p322)