天人五衰 豊穣の海(四)』三島由紀夫

 その生涯を通じて、自意識こそは本多の悪だった。この自意識は決して愛することを知らず、自ら手を下さずに大ぜいの人を殺し、すばらしい悼辞を書くことで他人の死をたのしみ、世界を滅亡へみちびきながら、自分だけは生き延びようとしてきた。(p84)