奔馬 豊穣の海(ニ)』三島由紀夫

 「正に刀を腹へ突き立てた瞬間、日輪は瞼の裏に赫奕と昇った」
 『奔馬』のこの最終行は、あまりにも名高い。しかし主人公が志を果して海岸で切腹したのが深夜だったことは、とかく忘れられがちである。太陽が昇る時刻ではない。それでも日輪は、赫奕と瞼の裏に昇っている。(p453)