改革が減らした税収

『消費税をどうするか』小此木潔

 合算してみれば、「税制改革」による税収減のほうが、バブル崩壊とデフレによる税収減の金額(六・九兆円)よりも大きいという客観的事実を財務省が認めているわけである(図2-2)。(p42)


 「消費税を導入したい、引き上げたい、という思いの強さが災いして、直接税を減らしすぎた」――表立っては言えない「反省」の言葉を財務省幹部から聞くようになって久しい。消費税を導入し、財源として大きく育てようとする「税制改革」路線が、所得税や住民税に代表される直接税の収入を減らす要因になってしまったというのである。官僚がこうした反省を口にするようになったのは、日本経済がデフレから回復し始めてもなかなか税収が元に戻らない状況が続いたためでもあるようだ。(p45)

サミットと米国の圧力

『消費税をどうするか』小此木潔

 日本の輸出増がもたらした経常収支の黒字も、財政赤字を膨らませる一因となった。貿易不均衡の是正を求める圧力がサミット(主要先進国首脳会議)や日米首脳会談などの場で強まり、日本は繰り返し内需拡大を約束した。そのための手っ取り早い政策が公共事業だった。(p31)


 日米間の貿易不均衡に対処するために行われた「日米構造協議」もまた、公共事業の膨張につながっていった。一九九〇年六月二八日に出されたその最終報告は、総額四三〇兆円の公共投資基本計画(一〇年間)を盛り込んだ。貯蓄過剰・内需不足の日本経済の構造を改革することによって、日本の貿易黒字を減らし、日米間の不均衡を是正するという論理だった。つまり、公共事業の増額によって日本の内需拡大が進めば、米国の赤字が減るだろうという、強引な政策だったが、「日本の構造改革」という美名のもと、抵抗もなく受け入れられたのだった。
 この計画はのちに増額修正され、一九九五年度から一三年間で六三〇兆円の公共投資を行うこととされた。この計画のもとで、国と地方の公債発行も雪だるま式に膨らんでいった。(p32)

危機の本質は

『消費税をどうするか』小此木潔

 人々を追い詰めている危機は、大量失業を生んでいる世界同時不況だけではない。むしろそれが、グローバル化や政策の結果として拡大してきた貧困と格差をさらに悪化させ、ワーキング・プアと呼ばれる人々を多く生み出すことによって社会を富裕層と貧困層に分裂させ、事態をますますひどいものにしているところに、危機のいっそう深刻な側面がある。
 人々の暮らしを脅かしているのは、たとえば医療や介護の危機だ。二〇〇九年三月、群馬県渋川市の老人ホームで火災によって入居者一〇人が焼死する事故が起きた。この事例は、介護問題の深刻さと、それに対する行政の取り組みの貧しさを浮き彫りにした。
 特別養護老人ホームとしての認可もない無届け施設だったことが、防災や避難対策の欠陥との関係を疑わせた。また、東京都内での介護施設が不足し、貧しい人たちが群馬の山間地まで送られていたことも明らかになったのだった。(p22)


 そもそも、介護の担い手の育成すら壁に突き当たっている。介護労働者の賃金が安すぎて、なかなか定着せず、慢性的な人手不足の状態が続いているのだ。
 厚生労働省が実施した二〇〇七年の「賃金構造基本統計調査によれば、福祉施設の介護職員の平均給与(月額)は男性約二三万円、女性約二〇万円で、全産業平均(男性約三七万円、女性約二四万円)に比べ、かなり安い。ホームヘルパーの平均も男性約二四万円、女性約二一万円だ。
 こうしてみると、最大の不安は「ワーキング・プアと呼ばれる人々が増えた社会が高齢化していったとき、何が起こるのだろう」ということだ。数多くの貧しい人々の老後や介護を、どうやって支えるのか。それができないと、日本社会はきわめて悲惨なことになる。(p23)

企業の社会保険料負担を肩代わりする消費税増税案

『消費税の経済学』大間知啓輔

 経団連は、二〇〇三年五月二九日、消費税率引き上げを次のように提案しました。
 ①消費税率を早期に八%に引き上げ、二〇〇七年度までに一〇%にする。
 ②二〇一三年度に一五%にし、一六年度以降は一八%に据え置く。
 これは基礎年金保険料などの企業負担を肩代わりさせるための消費税です。所得課税減税の穴を埋めてきた消費税と大衆の税負担を重くする点では共通であり、この種の消費税に国民はすっかり懲りたはずです。(p167)

小規模事業者の税の転嫁難

『消費税の経済学』大間知啓輔

 こういうわけで、大企業が担う業種では、本体価格の引き下げなしで、本体価格に消費税を上乗せできます。大企業は、他の事業者や消費者へ税を前方転嫁することがきわめて容易です。消費税法の建前どおりに税の前方転嫁がおこなわれます。
 ただし、大企業が中小企業から仕入れる際は、できる限り仕入れ価格を引き下げます。この場合、税法の建前に反して、大企業が中小企業の税の前方転嫁を妨げます。
 このように考えると、消費税率引き上げに大企業が賛成し、中小企業が反対する原因がはっきりします。大企業は消費税率の引き上げに反対しません。それどころか、大企業の経済団体の連合体である経済団体連合会は、第11章で述べるように、二〇一六年度以降の消費税率を一八%にする提案をしています。(p68)

高所得者重点の減税

『消費税の経済学』大間知啓輔

 消費税増税所得税減税でいったい誰が利益を得たのでしょうか。表1-1は、一九八八年に対する消費税を導入した八九年の夫婦子ども二人の給与所得世帯の所得税・住民税・消費税の負担の増減を収入別にみたものです。所得税額は、年収一千万円の高所得世帯では二九万円減(年収に対して二・九%減)なのに、三〇〇万円の低所得世帯では四万円減(一・三%減)にすぎません。
 所得税減税と消費税増税をあわせた軽減額は、年収一千万円の給与所得世帯が二三・七万円減(収入に対し二・四%減)ですが、三〇〇万円世帯は僅か一・五万円減(収入に対し〇・五%減)にすぎません。(p06)


 要するに、税制改正による税の軽減は高所得層を重点におこなわれました。(p07)


 このようにみると、誰のための消費税だったのかが明らかです。消費税は高所得者・高所得法人重点の所得課税減税の穴を埋める財源であり、彼らの課税を軽減するためのものだったのです。減税は消費を促す不況対策だといわれましたが、そうであれば低中所得者減税がふさわしい。しかし金持ち減税でしたから、消費は増えず、金持ちの貯蓄を増やしました。(p10)

「日本の法人税は高い」というまやかし

『消費税を上げずに社会保障財源38兆円を生む税制』◆不公平な税制をただす会 編

 「法人実効税率」のごまかし
 安倍首相は企業の競争力をつけるため、高すぎる日本の法人税を引き下げるとしています。経団連など財界も、日本の法人税率をアジア諸国並みに引き下げるべきだと要求しています。本当に日本の法人税は高いのでしょうか。表4は財務省がつくった法人税率の国際比較です。(p83)


 表4を見ると日本はアメリカよりは低く、中国、イギリスよりは高い、中位の水準のように見えます。安倍首相や財界は、これが高いので中国並みの25%まで引き下げるといっているわけです。もし法人3税を中国並みの25%に引き下げると、その減税額は年間5兆円になるといわれています。
 しかし、表4は、各国の表面的な法定税率を示しただけのものです。しかも、国によって制度や仕組みに違いがありますし、特別な優遇措置なども異なります。法人税の負担割合は、表面的な法定税率の比較をしても無意味なのです。比較をするなら、会社が実際に負担している割合、本当の負担率によらなければ意味がありません。(p83)


 そこで日本の大企業の実際の負担率を、各社が公表している決算書、有価証券報告書から計算してみました。すると平均で15%しか負担していないことがわかりました(表5参照)。
 財務省の発表しているわが国の表面的な法定税率は法人3税で32.11%(表4参照)ですが、大企業はさまざまな優遇措置によって、実際の負担は半分以下に減っているのです。これが大企業の本当の負担率です。諸外国と比較すれば、すでに中国より低いことになります。(p85)